fc2ブログ

花山稲荷だより「花の山」

京都山科の花山稲荷神社のブログです。季節の花や山科のこと、日々の出来事などつづります。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

神主西陣を往く2

おはようございます。花山稲荷の神主です。

西陣織は日本を代表する伝統工芸の一つ。世界中に自慢しても恥ずかしくないものの一つだと神主は思っています。

 この日は西陣織のとある織匠のもとを訪ね、お仕事中のところお邪魔をしてしばし見学をさせていただきました。この方と花山稲荷の付き合いは数代前からになる。最近では私にも幾分こころやすく言葉をかけてくださったり、家にお招きくださったりもしてくださる。

 その御当主は勿論西陣の伝統工芸師。ご子息も伝統工芸師でいらっしゃる。それだけでも凄いなあ、と神主は思うのですが、さらに凄いと思うことは今も尚、手機(てばた)で絹織物を織っておられるところ。機械化すれば寸分の狂いもなく、時間も短縮でき大量生産は可能だし、なんしろ人間の手が空くから楽。しかし、かたくなにそれを拒否し、心と技を織物に注ぎ込む。

 仕事場に近付くと心地よい音が耳に入ってくる。解る人には解る西陣独特の音。グわっしゃ コンコン バシャ グわっしゃ・・・ 文字で書くと変な音で騒音にしか聞こえない。しかし、これが実際には心地よい音色でなんら耳障りでもなくすんなりと体に入ってくる。
「この音を僕らは生まれたときから聞いて育ってきた。音が大事やねん。おのずと織機を操るリズム感、強弱の感覚が身につくんや」とご子息は仰る。

 見ていると簡単そうな単純作業ですぐにでも出来そうに見える。私ともう一人その日同行した人も実際に機織体験をさせて頂いた。
 1、まず右足でペダルを踏む。縦糸が上がる。
 2、上がったところに横糸を通す。横糸は梭(「ひ」横糸を通す船形の道具)を使うのですが、これの扱いが
   言葉では言い表せないくらい難しい・・・。
 3、そして通った横糸を打ち込む
この3つの作業を延々と繰り返す。しかしこれが難しい。先ほど書いた「音が大事」とはこの事を言う。工程によって音が違う。この音はどの工程の時の音。あの音は何をしているときの音・・・。それを耳と体と目で自然な状態で身につける。これが正統派の伝統工芸の家の人の強み。
 ためしに体験してみたが、さっぱり進まないし、進んでも糸がフニャっとなって上手く織れない。「難しいなあ~」と今流行のツイートするとすかさず御当主が「そんな簡単に出来たら私ら食っていけません(笑)」

 ちょっと写真で紹介。上手くツボを押さえた写真が撮れず、何しにいったんだか・・・という感じですがまあどうぞご覧ください。

DSC_0170.jpg
中二階から織機を見る。

DSC_0172.jpg

DSC_0175.jpg
御当主、作業中。黙々と進める。ここでも職人さんの言葉を聴いた。
「これ生糸ですねん。お蚕さんが出さはる糸。それを人間がこうして織物に仕立て上げてゆく。その過程で失敗することもある。そんなときは私も残念に思う。お蚕さん、役に立ててあげられんとゴメンな・・・と。そういいながら失敗した糸を処分してます」

DSC_0181.jpg
横糸を通す「梭」これの扱いが難しい・・・

DSC_0179.jpg
織機の後方から(つまり織り手と機械をはさんで向き合っている状態)

DSC_0180.jpg
わかりにくいけれども私と同行者の方が織った布。近くで見るとフニフニャ。

説明不足、観察力不足で大変申し訳なく思いますが、殊それほどに奥が深い。

御当主いわく
「機械式の織機なら歯車を合わせておけば、寸分の狂いもなく織りあがる。これには残念ですけど我々は勝てません・・・。そやけど目と耳と体全体で職人の心意気を注ぎ込むことは機械には真似出来まへん!そこを代々継いで行く。後世に伝える。これまた面白くやり甲斐のあることです」
「よく『正確に綺麗に織れますね~』って言われるけど、なにも私も、計算づくで織ってる訳ちゃいます。教わった通りに目と耳と体を使ってやってますねん。まあ、死ぬ前に『なんとな~くやってると綺麗に織れますねんで』と言うてみたいもんですな」


 ふ~む、やはり奥が深い。「伝統とは斯く在るべし」!
私も神主行に専念しよう・・・改めて思った日でした。

改めてブログランキングクリックも宜しくお願いしま~す!



 
スポンサーサイト



| 花山稲荷のこと | 09:09 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://kwazaninari.blog49.fc2.com/tb.php/241-6e9ffb97

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT